暑い暑〜い日が続き、人気沸騰中なのが「ビーサン」。
「ビーサン」とは、ビーチサンダルの略でゴム草履のことである。1足数百円でスーパーや海の家などで売られている、ひと夏の使い捨ての、おしゃれとはほど遠い、ただの消耗品という感じのもの。
そんなゴム草履、じゃなくビーサンが今、若い女性たちだけでなく、おしゃれにうるさい大人たちの間でも大人気で、1足3万円なんていう商品も登場しているから驚きである。
ただのゴム草履で今では100円ショップにもあり、“使い捨て・安物”のイメージが定着しているこの商品が何故、これほどおしゃれに変身することが出来たのか不思議である。
ビーサン ブームは、今春からで、一人の女性によって仕掛けられたもの。その女性とは、2002年にハワイアナスの貿易部長に就任した日系ブラジル人のアンジェラ・ヒラタ氏。ヒラタ氏はブラジルの「国民靴」とも言われる「実用的で快適なゴム草履」のハワイアナスを、ファッションアイテムブランドにすることを計画した。
しかし、数百円の実用的なイメージの強いゴム草履をファッションブランド商品へとイメージを高めるのは難しい。デフレで価格破壊が起きている今、付加価値をつけて商品イメージを少しでも高めたい、ブランド化して差別化を図りたいと考えている企業は多いが、なかなかうまくいかないのが実状である。イメージを高めるには、「こんなセレブですごい有名人も愛用していますよ」と、トップダウン方式でするのが一番いい。そのトップをどこに設定するのかが最大のポイントになってくる。それが、なかなか上手くいかないのは、そのトップの設定が低いからかもしれない。ジュニアの場合は、日本が一番だと思うが、それ以上の年齢だと、国内でのトップではブランド化をするには少し弱く、やはり世界でのトップを設定しブランド化を図った方がイメージを高めやすいだろう。“安い・実用品”というイメージが定着していればいるほど、その傾向は強いと感じる。
そこで、このゴム草履。まず、2003年に欧米の有名ブランドと協力し、緒の部分にジュエリーをあしらった高級な商品にモデルチェンジし、市場に投入した。その後、映画のアカデミー賞出席者への引き出物に提供することで、高級おしゃれ商品のイメージを作り上げた。この新しいイメージにより、欧米でビーサンブームが起こった。日本では、昨年後半からニューヨークのおしゃれな女性がビーサンを履いているという情報が少しずつ入るようなった。また、海外旅行した人が、パリやニューヨークの店頭でおしゃれなビーサンを目にする。この結果、今春に日本でもブームが訪れたというわけだ。グッチ、ヴェルサーチなどの一流ブランドでは革などを使ったものもあり「大人のビーサン」として販売されており、価格は1万〜10万円。デザイナーのエミリオ・プッチが自ら描いた絵をあしらったビーサンは3万450円。日本のサンダルメーカー、ヤマトでは和紙を使ったビーサン、1万290円という商品もあり、街での履物として受け入れられている。また、家の中でスリッパがわりにビーサンを履く若者も多いそうだ。通常のサンダルよりビーサンの方が底が柔らかいので足にフィットする、というのが理由のようだ。
気楽で応用範囲が広い=実用的な安いもの、というビーサンのイメージに高級感をプラスすることでおしゃれに大変身させ、数十倍の付加価値をつけることに成功したホームラン級の大ヒットだといえる。
※ここでのトップとは、若い女性やおしゃれな大人の女性がとても憧れている人、という意味で使っています。